こんにちは、ぱぱ記者Kenです。

パビリオンの内容がどんなものなのか、全く予備知識がない中、訪問したルクセンブルクパビリオンは、驚きの連続でした。対応していただいた担当者の話は非常に興味深く、ルクセンブルクパビリオンのこだわりがどれほど本気かが伝わってくる内容でした。その中でも以下のコメントは皆さんにも知って欲しいものでした。

「ルクセンブルクは地理的にヨーロッパのほぼ中央に位置し、フランスやドイツと国境を接しているので、どこにいくにも便利で、国が小さいので国境を超えた往来は当たり前。そのためルクセンブルク人はオープンであらゆるものを受け入れたり、異質なものとうまく付き合ったり、未知のものを知りたいという好奇心を持っていて、それらはDNAに刻まれていることだ」ということを聞き、今の日本人と真逆ではないか、と感じ、非常に興味をそそられました。

パビリオンの外観の拘りから始まった話は、パビリオンの中に入る前に記事が1本できてしまうほど濃厚で興味深く、その後にパビリオン内の話があり、国としての向き合い方など様々なトピックに移っていきました。だからこの記事はすごく長いです。

シックな色合いの外壁は、艶出し塗料が塗られた木の板。それをフックのような土台を使って固定しながら貼り合わせています。理由は解体しやすいから。万博のテーマでもあるSDGsに沿って、このパビリオンでは使用されている全ての材料は万博終了後に解体して再利用される予定で選ばれています。 またそれだけでなく、壁に使った板は、元々建築現場で使われていたものを利用していて、万博終了後はまた建築現場で使用するというサイクルを辿ることになっています。Refuse、Reuse、Recycleという考えが根底にあるのだ、という説明でした。
無数にある壁に適した素材の中から目的にあったものを選ぶと、それ以外を排除（Refuse）することになります。そして建築現場で使っていたものをここで使い（Reuse）、終わったら次へ渡す（Recycle）というプロセスになっています。

同様に屋根とそれを支える支柱の役割をしている白い構造物は、雨を避ける屋根の役目だけでなく、日陰を作ったり、降った雨を貯めて、植物に与えたり、トイレなどに使ったして雨水をReuseする仕掛けになっています。 そしてここで使われているシートの素材は、終わった後、日本人の職人の手によってバッグや財布などにRecycleされます。そのサンプルはギフトショップに展示されていて、注文も受付ています。

まだあります。少し迷路のような導線を辿らせる待ちの列ですが、これも意図してこのような流れになっています。列が進むごとにルクセンブルクの情報が壁に描かれていて、少しずつ同国のことを学びながら進んでいくようになっています。 そして壁に描かれているQRコードをスマホで読み取ると３Dデジタルイメージを鑑賞したり、専用ページに繋がって、デジタルブックを通して、自分のペースでルクセンブルクのことを学べるようになっています。

この待ちの列が続いている空間には、BGMとして音楽が流れていますが、これはルクセンブルクのアーティストがこのために作曲した音楽だそうで、時々聞こえる心臓の音と合わせてメディテーション効果を狙っているそうです。列に長時間並んでイライラするのではなく、音楽と心臓の音でリラックスしてみて下さい。

やっとパビリオンの入り口に辿り着きました。パビリオンのテーマは「ドキドキ　ときめくルクセンブルク」。

パビリオンに入ると、1グループ25名で３つの部屋を巡って行きます。最初にルクセンブルクの簡単な紹介ビデオをみて、いざ出発です。

１つ目の部屋は多様性がテーマ。人口の約半分が外国籍の人だというルクセンブルク。その国籍数180カ国以上でまさに多様性のるつぼ。そして人だけでなく歴史や文化、価値観が違う人々が神奈川県ほどの大きさの国土の中に住んでいて、ルクセンブルク語、フランス語、そしてドイツ語が公用語で、大多数は英語も話せるという特性があり、とにかく多種多様。
それを表すものとして、縦長のスクリーンにルクセンブルクの普通の人が登場し、自分たちの日常や思いの丈を語っています。住みやすさや社会について、人のオープンさ、誰でも受け入れる文化などを知ることができます。 全員で16人分の映像が用意されていますが、ツアーでみられるのはそのうちの5人分だけ。残りもみたい人はQRコードから繋げて、サイトからゆっくりみて下さい。 時間に余裕のある方は2回、3回とパビリオンを巡ってみて下さい。そこには日本とは違う世界があります。
人は皆違うことが当たり前で、違っているからと否定したり正そうとするのではなく、ありのままでその人を受け入れることが大事だと教えています。多様性とはそういうものなのです。

次の部屋は全く違ったデザインになっていて、LEDで飾った球体が中心に構成された空間で、各自がゲームステーションを使ってインタラクティブにアクセスするというものです。

ここでは手元のタッチスクリーンに複数のアイコンが並んでいる中から、気になるアイコンにタッチすると、そのアイコンが球体へ移動し、手元のタッチスクリーンには説明文が現れます。 内容は現在ルクセンブルクで取り組まれているプロジェクトについてで、アイコンごとに違うプロジェクトが紐づけられています。プロジェクトは多彩で、日本が関係しているものも2つあるとのこと。それらの中に興味、関心のあるものがあれば、参加することも可能、ということで、ここでも多様性や国籍にかかわらず柔軟な受け入れ体制ができていることがわかります。

この体験では、アイディアを出しあうところから始まり、それらをプロジェクトへ形作っていく際の障壁の低さや自由度の高さを伝えようとしています。革新的なアイディアがある人はルクセンブルクに来れば、国籍に関係なくサポートを得られる可能性があるということを知ってもらうことがここでの目的なのです。それは国が小さい上に人口も68万人ほどと少ないので、継続的に国が発展、成長していくには外国人も含めて国にとって価値のあるものには積極的に投資し、受け入れていく必要があると感じているからなのです。

最後の部屋では、宙に張られたネットの上に乗って、映し出されるルクセンブルクの映像を体感します。体感というのは、映像を映し出すスクリーンが天井と前面に2面、そしてネットの下にある床面と全部で4面あり、自分たちはその4面の中でネットには乗っていますが、宙に浮いている様な状態になるので、没入感が半端なく、ルクセンブルクにいるかの様なリアルさのある体感を得られます。

映像に登場するのはユネスコに認定されている世界遺産や豊かな自然、近代的な都市部などルクセンブルクの有名スポットで、過去から現在、そして未来へと繋がるサステナブルな環境を維持していることを没入感の中で感じてもらえる様になっています。ルクセンブルクに行った気分になるだけでなく、実際に行きたくなったらいつでもウェルカムだということでした。

この部屋を出ると中庭の様なスペースにカフェ・レストランと、ケーレブンと呼ばれるルクセンブルクの伝統的な遊びのボーリングレーンがあり、誰でもチャレンジできます。ストライクを出したらシャンペンボトルがプレゼントされるそうで、これまでに1人だけ達成した人がいるらしいです。私も何度か投げさせてもらいましたが、なかなか思うようには行きませんでした。

レストランでは、ルクセンブルク名物のソーセージなどが販売されていますが、現地ではここのソーセージよりも細いものが主流で、ここで販売されている極太のソーセージは万博用の特別アレンジモノなので、ここでしか食べられないメニューになります。

デザートは、国内で案を募集して集まった中から和風の要素も取り入れたスイーツを6種類選択し、それらを1種類ずつ毎月第2週目に新しいスイーツに入れ替えるので、全部食べたい人は毎月ルクセンブルクパビリオンに通う必要があります。

開放的な空間で陽光が差し込み、青空が見えて、風が吹き込み、そして美味しい料理とワインやシャンパン、中庭なので外の喧騒からも距離があり、ゆっくり寛ぐには最適。ただし、この空間に入るためには列に並んでパビリオンを体験した後にしか辿り着けません。残念な気もしますが、その分混み合うことがないのでよしとしましょう。

食事でリラックスした後、ギフトショップへ向かう前に1つ注目してもらいたいものがあります。
それは、パビリオンの構造を説明した図で、カフェのすぐそばの壁に描かれています。これを見るとルクセンブルクパビリオンが環境に配慮されて建設されていることがよく解ります。

その後はギフトショップでお土産を物色してみて下さい。先に紹介した構造物に使っているシートを利用したバッグや財布のサンプルが展示されているのでチェックして、気に入ったら予約してみて下さい。

パビリオンに到着した際に全体の写真を撮影しようとしたのですが、植えられた木々が邪魔をして綺麗に撮影できる角度がなかったのですが、話を聞いた後に改めて見ると、木々は葉が繁り、列に並んでいる人々に木陰を提供し、木々があることで緑が広がり、目を休める効果や感情的にリラックスさせてくれる効果もありそう。機能だけを求めるのではなく、違った視点から見ると、今まで見えていなかった景色が見えてくるものですね。

今回の万博はテーマに持続可能性やSDGsが入っているので、各パビリオンが趣向を凝らしていて、パビリオンの移築や解体してパーツを再利用したり、廃棄物をできるだけ出さないようにする工法や素材の選択など様々な案が採用されています。こういうやり方が次回以降の万博にも引き継がれていけば、今回日本が万博をホストした甲斐があったのではと思ってしまいます。
そんな中でもルクセンブルクパビリオンは、かなり考え抜かれたやり方でパビリオンを建設したことが伝わってきました。
来館する人は、中のコンテンツは勿論ですが、建物の作りなどにも少し意識を向けてあちこちチェックしてもらいたいです。

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